狭心症・心筋梗塞とは
心臓自身を栄養する血管を冠動脈といって、心臓から大動脈に血液が出た後の最初の枝の血管です。右冠動脈と左冠動脈の2本があり、左冠動脈はさらに大きな2本の枝に分かれます(前下行枝と回旋枝)。この冠動脈が何らかの原因で狭くなると、血流が減少し、心筋が酸素不足になって、胸痛や胸部圧迫感を引き起こします。この心筋の酸素不足が一時的に起こった状態が狭心症です。狭心症による症状は通常数分程度で治まりますが、これが持続したり、冠動脈が完全に閉塞して血液が供給されなくなると、心筋が単なる酸素不足ではなく、壊死に陥ります。これが心筋梗塞です。心筋梗塞の範囲が広いと、心機能が非常に低下するため、死亡することもあります。冠動脈の狭窄の原因として、冠動脈がけいれんを起こしたように収縮することにより起こる場合(攣縮性狭心症)と動脈硬化により血管壁(特に内膜)が厚くなって実際に狭窄が生じていることにより起こる場合(器質的狭窄≒労作性狭心症)があります。攣縮性狭心症はその原因である、喫煙、飲酒、ストレスを排除することや冠動脈を広げる薬、循環を改善する薬などを常時内服することで予防することができます。器質的狭窄に対しても冠動脈を広げる薬や心臓の活動性を低下させる薬、抗血小板剤など冠動脈を詰まらせないようにする薬、コレステロールを下げて動脈硬化の進行を予防する薬が有効です。しかし、器質的狭窄が進行してしまうと、狭心発作を繰り返すようになり(不安定狭心症)、そのような場合は、カテーテルで狭窄部部位を広げてステントを入れる治療や外科的に動脈や静脈のグラフト(胸骨の裏、前腕、胃の動脈や下肢の表在静脈など)で狭窄部位の迂回路を作成する、冠動脈バイパス術が必要になります。