透析予防とは
腎臓は血液を濾過して老廃物を尿として排出します。腎臓の働きが低下してくると血液中に不要なものが溜まり、逆に必要なものが尿に混ざって排出されてしまいます(分子量が小さいタンパク(アルブミンなど)が尿から出るといわゆるタンパク尿となります)。腎機能低下(糸球体濾過量の低下)もしくはタンパク尿が出ている状態が3ヶ月以上続くと慢性腎臓病(CKD)と定義します。CKDになると、腎機能を回復することはなかなか困難であり、病期が進むと透析、心血管死、全死亡リスクが高くなり予後不良となります。腎機能障害となるリスク因子は年齢、血尿、タンパク尿、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙です。そのため、腎臓の予後を改善するためには早期の治療介入(生活習慣病の是正)を行い、病期の進行をなるべく遅らせます。特に、糖尿病や高血圧のコントロールは重要で、腎臓に良い影響を与えるというエビデンスのある薬を選択することになります。最近では、血中カリウムの濃度上昇に注意しながら、非ステロイド型のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を使用する治療が注目されています。
CKDの患者様に対する糖尿病の管理
糖尿病は動脈硬化を進行させます。腎臓は血液を濾過する糸球体と呼ばれる細い血管の塊で尿が作られるため、糖尿病が進行すると、この糸球体の機能が低下してきます(糖尿病性腎症)。糖尿病のコントロールで使用する指標ではHbA1cが良く用いられますが(正常値は6.2以下)、糖尿病の方はまず、7.0以下を目指して治療していきます。最近では糖尿病経口薬の中で、SGLT2阻害薬の腎保護効果が注目されています。
CKDと高血圧
持続した高血圧による腎臓の病変を高血圧性腎硬化症といいますが、腎臓内の細動脈の変化に伴い、糸球体硬化および間質の線維化が生じて、腎機能が低下します。CKD患者様の目標血圧は、診察室血圧で140/90mmHg以下(家庭血圧で135/85mmHg以下)です。腎保護効果の期待される降圧剤としては、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)等があります。ただし、高度に進行したCKDには逆効果になることもあるので注意が必要です。