大動脈瘤とは

動脈は心臓から駆出された血液を全身に送るための管ですが、心臓から骨盤内で左右の総腸骨動脈に分かれるまでの上行、弓部、下行、および腹部の動脈を大動脈と呼びます。大動脈には常に血圧がかかっています。大動脈の壁の一部が全周性もしくは局所性に拡大し、正常径の1.5倍(胸部で45mm, 腹部で30mm)を越えて拡大すると大動脈瘤の診断となります。原因は動脈硬化性、外傷性、炎症性、感染性などがありますが、ほとんどが動脈硬化によるものです。動脈硬化は、炎症、線維増生、石灰化により、血管壁の弾力性が失われた状態です。ラプラスの法則により、径が2倍になると壁に掛かる力は2倍になると言われるため、大動脈瘤になって径が拡大すればするほど、破裂や解離を起こすリスクが高くなります。大動脈径が拡大しても特殊なケースを除いて原則症状はありません。ある限度を超すと突然に破裂や大動脈解離を起こし、急死の原因になります。従って、瘤径の拡大予防が重要で、高血圧の是正とコレステロールの管理が必要になります。一般に上行・弓部大動脈では瘤径(最大短径)が55mm、下行・胸腹部大動脈では60mm、腹部大動脈では50mmを超えると、外科的手術のリスクより破裂や解離を起こすリスクが高くなるため、侵襲的治療(人工血管置換術)の適応になります(ただし、患者様の特性により多少基準は変わる可能性があります)。やや解剖学的な制限はありますが、最近ではより低侵襲な治療であるステントグラフト内挿術による治療が多くなってきました。